ブックタイトル国際印刷大学校研究報告　第13巻

概要

国際印刷大学校研究報告　第13巻

15中国歴史年表を翻りながら印刷の歴史を考える（１）■松　根　　　格中国歴史年表を翻りながら印刷の歴史を考える（１）Ascertain the history of printingover the chronology of Chinese History. (1)Itaru MATSUNE（一）中国は5000年の歴史を持った国である。5000年は、現在から振り返ると紀元前3000年からの歴史があることになる。中国の歴史書「史記」の帝王の年代記（本紀）には五帝本紀第一、夏本紀第二、殷本紀第三、周本紀第四、秦本紀第五の順で書かれているが、朝鮮でも、日本でも同じだが、古代の社会における国の誕生は神話や伝説で書かれており、それは実際には確かめられない事柄である。では、中国ではどうであろうか。中国で青銅器が作られたのは殷と周王朝の時代であることから、「史記」における五帝本紀一、夏本紀第二の時代が、神話の時代と考えてよいだろう。ここでまず紀元前の五つの時代について考えてみる。それには道具が必要なので、その道具を示しておきたい。それは中国社会科学院歴史研究所編「中国歴史年表」を翻りながら進めたい。（二）１．五帝本紀第一の時代この時代は旧石器時代、新石器時代である。黄土高原に直立する北京猿人が現れたのは、ほぼ50万年前のこと。前7000?6000年頃に亀の腹甲や牛骨、陶片、石の上に何か記号、符号が刻まれたものがあった。前6000?5000年に稲作が始まった。前4800?2900年には現在知られている仰韶文化が始まったとされる。この時代の重要なポイントは、前3000年頃に伝説ではあるが蒼そうけつ頡により文字が誕生したと書かれている。前2100年前後に五帝の時代が終わり、夏の時代が始まった。２．夏（Xia）の時代（前2100?1600年）夏は前2070年に建立された。この時代も神話伝説の時代と呼ばれていたが、河南省周辺が考古学者達による発掘調査で夏の存在が確認されたのである。この正式発表は2000年のことである。岳南「夏王朝は幻ではなかった」?1200年溯った中国文明史の起源　柏書房　2005年この本に発見の経過が書かれている。３．殷（Yin）、別名　商（Shang）の時代前1600?1100年前1300年頃のものと推定される大量の甲骨が殷墟から発見され、この甲骨の上に文字が刻まれていた。これが甲骨文字である。この文字は約4500字があった。殷墟は河南省安陽市西北部にある殷王朝後期の遺跡である。ここで20世紀で最も重要な考古学上の発見がこの遺跡であった。