ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第14巻
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国際印刷大学校研究報告 第14巻
11印刷画像の定量解析(Ⅰ)■ ほとんどのドットゲインはオプティカルドットゲインで、主として網点印刷物の白紙部から入射した光が紙中で散乱しその一部が網点インキ膜に吸収される。この光の吸収量は、網点インキ膜によるのでは無く、網点が太った為に生じたと見なした時の網点面積比を後述のMurray &Davies式で算出し、実際の版上の網点面積比と比較し、その増加分をドットゲインといっており、一般にはそれを網点面積比で表す。 網点面積比a(100%を1とする表示)の網点印刷物の反射率Raは、白紙の反射率をRp、ベタ部の反射率Rsとすると、ドットゲインを考慮してないMurray & Davies式があり、その式では、Ra=(1?a)Rp+aRsで表される。その値は、網点面積比aの印刷物の反射率の実測値R'aとは一致せず、実測値のほうが小さな値でその差がドットゲイン値となる。したがって、網点面積比aのドットゲイン量は反射率で表せば(1?a)Rp+aRs?R'aとなる。 このドットゲイン量をMurray & Davies式で表した時の網点面積比a'は、(1?a' )Rp+a'Rs=(1?a)Rp+aRs?R'aの網点面積比a' で表される。これがドットゲインの網点面積比表示となる。 横軸に網点面積比a、縦軸にドットゲインの反射率量をとると上に凸の山形で表される。したがって二次方程式ka(1?a)で近似出来ることとなる。定数kの近似に対する最適値は最小二乗法で各網点aに対してΣ[ka(1?a)?(1?a)Rp?aRs+R'a]2のkを変数とみなして微分し0と置いて求めればよい。kにより求めた計算値と、実測値を用いてその相関係数を求めれば、二次方程式による近似度を知ることができる。 よく知られたドットゲインの補正値としてYule & Nielsenの補正値nがある。Murray & Davies式に補正値nを導入し、紙の濃度を0とする測定値を用い、濃度をDで表すことにすると、Da=n log 1/[(1?a)+aRs1n]で表せるとしている。この式を反射率に変形すると、 Ra=[1?a]+a10-Ds/n]nとなる。(1?a)+a10-Dsの値から前式の値を引いた値がドットゲインの実測反射値になるように、nに適当な数値を代入し、エクセルのグラフでその結果の一致度を確認しながらn値を求める。以上の2方法で補正値kやnを求めれば、ドットゲインの補正が式で表現できるようになる。ここで、Murray & Davies式とYule & Nielsen式を指数関数の形で表すと、それぞれ、a=(1?10-Da)/(1?10-Ds)、a=(1?10-Da/n)/(1?10-Ds/n)で表される。 今まで述べてきたドットゲイン補正は墨単色の網点印刷物やR, G, B単色印刷物には適用できるが、カラ―網点印刷物に対するドットゲイン補正の文献はない。したがって現場ではドットゲイン補正をどのように役立てているのだろうか疑問に思う。ジャパンカラ―についても、特定の用紙と特定のインキで定めたC, M, Y, Bkのベタ濃度で印刷できれば、ドットゲイン量が定まるのは当然である。多分印刷条件が定まれば製版方法も定まってやり易くなるためであろう。しかしこれらの定められた条件は現状での平均値でこれにより特別に印刷品質が向上したり、生産性が上がるわけではない。 網点の刷り重ねによるカラ―画像再現でのオプティカルドットゲイン補正は如何にすべきであろうか。その反射率予測にはよく知られたNeugebauer式がある。この式は複雑で16項の足し算になっており、網点の重なり具合の面積比が、確立の加法、乗法定理を表すベン図に従うとしたDemichelの式を適用している。ベタ刷り重ねの加法性を仮定すると各4色の項の積で表せる簡単なPollakの式となる。この式の計算値とNeugebauer式の計算値はほとんど変わらない。Pollakの式はR, G, B光にたいしてもそれぞれ記述できる。しかしその値にはドットゲインが含まれていない。 R光に対しては、刷り重なった網点の状態で、その光を主に吸収するのはC網点とBk網点であるので、Bk網点がC網点になったと仮定し、C網点の面積がc+bk-cbkに増加したとみなし、C単色の網点の面積比がc+bk-cbkの時のドットゲイン補正値を採用すればよい。G光、B光に対しても同様に補正できる。 この網点の刷り重ねによるカラ―画像再現でのオプティカルドットゲインの補正が可能となって始めてカラ―画像再現の数式化が可能となった。