ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第14巻
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国際印刷大学校研究報告 第14巻
13イギリスにおける印刷及び出版業の動向■若 生 彦 治イギリスにおける印刷及び出版業の動向Climates of printing business and some bookshops in U.K.Hikoji WAKOHはじめに 日本の印刷業,出版業および書店(印刷関連業=「同業」)は,売上高が2000年から逓減し始めた。その背景には電波を情報伝播媒体とする情報通信技術(「IT」)の進化および量産量販型企業の国際分業化の拡大がある。同業は逓減対応策として設備投資を抑制し,地域密着型のサービス業化を模索している。一方,英国(連合王国)の同業は中世時代に萌芽,聖書の作成に貢献し,1600年代の石炭革命に因る産業構造転換期に発展し,1860年代に繁栄,その後に印刷手作業が機械化され急速に衰退している。IT機器は1950年代に出現,その場から音声や動作,動画,臨場感を伝達する機能を有し,日常生活における直接対話,企業における生産販売,経営資源調達などの情報収集提供の手段(「情報手段」)に活用されている。IT機器の出現は工業化社会を国際ネットワーク型産業社会へ変質させている。 日本の産業構造転換期および同業の逓減は,英国よりも約260年および約150年遅れて顕在した。現在の英国の同業は逓減が顕在化して約60年経過しており,この期間中に逓減対応としてサービス業化を模索し続けている。日本の同業は,逓減が始まってから約10年経過,この期間中にサービス業化を模索しているがサービス業化に戸惑っている。今後の日本の同業が英国と同じサービス業化の道を辿る訳では無いであろうが,今日の英国の同業の営業経営形態の観察はサービス業化模索の1例として参考になると思われる。 本稿は,日本の中小同業の逓減対応策の参考資料として英国・エジンバラ市内の同業のサービス業化の現況(調査2013年)を報告する。同市の同業は住民数が50万人と少なく,過剰投資を抑制,技術の深堀や組織的人材育成を放棄,経営者個人の感性・アイデアに基づく経営,兼業化を志向している。その志向は模索の途上段階にある。1.日本と英国の移民国家としての歴史的相違 活版印刷技術の最大の需要者は,統治組織(王朝,教団)および産業(広告,教育,健康,娯楽)である。日本の工業化および同業の逓減は英国よりも約260年および約150年遅れて始まった。この遅れの要因は両国の対岸国である大陸からの民族移動の難易の相違にあると考えられる。各国のその時期における定住可能な人口数は気候(太陽光エネルギー),国土面積,地形,水利・農水技術および作物の品種で決まる。近年の日本の緯度,国土面積および農水技術などで養える人口数は6千万人と推定されている。これを超える人口数は食糧の争奪戦,国外移住または食糧輸入を選択させられる。争奪戦は優勝劣敗が横行,武力で権力を掌握した封建王朝を興亡させている。国外移住はその目的が飢饉回避の外に生活費獲得や迫害からの逃亡などにあり,移住国の人口数,民族・人種・言語・文化・宗教を多様にしている。また,食糧輸入は輸入に必要な代金を稼ぐため輸出可能な製品の競争優位性,産業構造を農業社会から工業社会へ脱皮させる発想,貿易に必要な資源エネルギー,社会インフラおよび外交・国防力を要する。日本と英国は先祖が対岸国の大陸から移住している点で共通しているが,地政学的距離および外洋航海造船技術に大差がある。日本は極東の島国でありアジアから渡来してきた移民が島内に定住,母国の王朝制度および漢文字を敷衍,中央集権・官僚統制依存を踏襲している。一方,ブリテン島は紀元前から多数の異民族が欧州大陸から船で移住,新移民と先住移民が混住している多言語多民族の移民社会である。