ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第14巻

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国際印刷大学校研究報告 第14巻

15イギリスにおける印刷及び出版業の動向■部の食糧品を対象に実施されている。B店は顧客が買いたいと思う学術専門書の価値についてソファに座って知人と意見交換できる。絵本は玩具,装飾品または子供向け衣裳店(約60㎡)で販売されている。古本は裏町通りにある専業店および大通りに面している古物商店で販売されている。小規模専業店(60㎡)は流行小説や戦記を品揃え,喫茶室を設け,来客の店内滞留時間を長くさせることに必死である。古物商店は小説,歴史,戦記等の古本をリサイクル家具,楽器,美術品等と並べて売っている。日刊新聞,週刊誌および一般家庭向け読み物は,スーパーで販売,買物客が食材などを購入するついでに買っている。 同市の食堂,ホテル,小売店などのサービス業は商品の品揃えと主要価格帯をほぼ統一,格付けしている。地元市民は自分の所得水準,属性,民族・文化の嗜好に見合う商品を品揃えしている商店を熟知,直行している。格付け・差別化は購入者からみて日常の買い物に費やす時間と支払いの不安感を少なくし,食堂や商店からみてリピート顧客の囲い込み,仕入れ品の回転率と現金収入を高め,在庫量を抑制,経営を安定させていると思われる。3.文化差とサービス業化 印刷物,印刷技術および印刷関連業は各国で個別に発展している。日本の紙の印刷物は売上高が逓減している。この逓減は印刷企業の売上高であって,印刷物の売買を生業にしていない個人や家庭,学校,職場で作成され印刷物が含まれていないことより,印刷物の総需要の動向を表すものでない。印刷技術の用途は紙から精密加工,機能素材の製法に拡大されている。サービスは非定型業務である。日本と同市の具体的なサービス,公共施設の運営には相違がある。例えば,日本のサービス業は“おもてなし”を標語にしている。書店は顧客が本を吟味するための椅子を設けていない,書籍・新聞の売り手が販売価格を設定している。日本の地方自治体の公園管理者はブランコなどからの落下,衝突に因る訴訟と賠償を恐れて危険な遊具を公園から撤去している。医療,教育,金融の各企業は定型化が可能な手作業を機械化し,非定型な判断と臨機応変を人間に対応させている。他方,E市の書店は店内サービスに選択・意見交換・コミュニケーションの“場”を提供している。E市の児童公園は危険が想定される遊具の大きさ,高さ,形状,材質などのデザインを入念に工夫,下にスポンジ,木片などを敷いている。日本と英国のサービスには防止と撤去の発想の差がある。その背景には民族移動,言語,宗教,戦争および統治の歴史の差異がある。英国政府は自国の人種,出身母国の生活環境・文化,所得・資産,知識能力が分散している多民族多言語社会であり,世界中から低価格製品が流入している現実を考慮し,社会秩序混乱を抑制する目的で雇用形態を多様化させて就業機会を増やし,社会保障制度の充実およびその財源となる消費税率(20%,軽減税率あり)を高めている。公設公園は異民族の親子が遊びを介し異民族と交流できる数少ない場である。サービス業は移民の出身国の文化,習慣などの差に着目し,自店の立地および消費者の求めに合わせて品揃え・主要価格帯を差別化している。英国の農民は80数歳でもパソコン操作できる。同市の印刷関連業は自律経営機能の強化策として兼業を選択,リピート顧客の囲い込み策,サービス業化を模索している。まとめ 日本の印刷関連業の逓減は英国よりも約50年遅れて始まった。遅れた理由の一つは対岸の大陸からの移住者数が少なかったことにあると考えられる。エジンバラ市は移住の激しいスコットランドの首都,人口数50万人の観光都市である。同市の零細中小同業は移民の文化,主観,嗜好,所得の差に着目し兼業,品揃えの差別化,自律経営を進めている。参考文献Peter Mathias(1982)『THE FIRST INDUTRIAL NATION, An Economic History of Britain 1700-1914』ROUTLEDGE, London.