ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第14巻

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概要

国際印刷大学校研究報告 第14巻

1サービス業化と技術開発,人材■サービス業化と技術開発,人材Reinforce printing services with new special technologiesHikoji WAKOH若 生 彦 治 印刷業の産業分類範疇は2001年,中央省庁の再編成に伴い製造業から情報・メデイア・コンテンツサービス業へ移行されて13年経ちました。行政担当部署名は通商産業省生活産業局紙業印刷課から経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課へ改称されました。 印刷技術は高速,小ロット,オンライン化へ進んでいます。一部の日本語の書籍・カタログは日本,韓国,ベトナムの各企業が日本国外で印刷しています。印刷技術の用途は多層膜製法から3D印刷法やセキュリテイ機能付加などへ拡大されています。3D印刷法はノズルから溶出するプラスチックなどを積み重ねる加工法です。このルーツは骨,頭蓋骨の立体像をレーザ光線で計測,数値制御(CAD)で切削加工する20年前の技術にあります。また,現在の世界的IT巨大企業は,20年前にベンチャー企業であり,顧客が求めている情報サービス機能を探り,顧客ニーズを満たすため他国の競合企業の外部経営資源,人材,既存の技術を巧みに活用し,企業イメージ作りに集中投資しています。その成功企業の現在の組織形態は,20年前の日本の総合電機企業と同じ垂直型です。 一方,日本の印刷業の年間売上高は2012年に7兆円を割り,年率3%で逓減が続いています。一部の流通・出版・著作者は,国内諸事情と既得権益に執着するあまり情報サービス業務の国際化の障壁になっているとも言われているようです。例えば,大学・公立図書館は公共資産である知識の普及を使命とする機関でありますが,電子書籍配信の実施率が欧米で80?95%,日本で0.5%と大差があります。大差の背景には,日本国内における図書館利用者のIT機器に対するアレルギー,単年度予算制度,国内規制・配信ルールの標準化の遅れ,図書館の無料貸し出しと書店の販売量との利益相反,書籍売上高(1兆8千億円,同年)の逓減,新刊書(8万点)の返品率が40%,書店閉鎖という厳しい現実があります。各国にはそれぞれ固有の言語,歴史,産業,利権配分・商文化があり,物流販売サービスの仕方にも差異があって当然です。しかし,情報サービス業は国内外の政治経済情報を伝播させ,地域産業文化を伝承,交流,育成させる長期的使命を少なからず持っています。 国内規制の長期化と販売慣習の固定化は,世界の配信・流通モデルの利用,配信ルールの国際標準化,自らのサービス業務の拡張・転換,ソフト・技術開発を遅らせている原因になっている可能性があります。日本の多くの製造業は技術・商品化事業での失敗を糧に自社技術を顧客が求めている機能に結びつけて企業イメージ作りに試行錯誤,苦闘しています。 企業イメージ作りとサービス業化の土台は自社技術の深化,柔軟な視点を持つ若手サービス・マーケット人材の育成および信用される経営のビジョンにあると思います。本校のeラーニングなどはこれらの基礎,再学習または育成を助言致しております。巻頭言