ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第14巻

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概要

国際印刷大学校研究報告 第14巻

3印刷産業に於ける環境諸問題の一考察■機のオペレーター)で胆管がんを発症し、死亡者が出たとのNHKなどの報道もあり、国際印刷大学校では急遽分担して2012年6月より調査してきた。本論では胆管がん発症の概要と対策及び印刷産業界での環境問題の対応についてまとめた。2.胆管がん発症の要因 オフセット校正機での作業はカラ―再現に4色のそれぞれの印刷インキで10数枚の印刷をして、色換え(C,M,Y,K)毎に、洗浄液で印刷インキを洗い落とし、次の印刷インキを校正機に着肉させる。このため1台の校正機で1日20?30種類以上の印刷を行なうことが生産のノルマでもある。 2012年6月15日、NHK大阪TV熱視線19時30分から30分間の特別番組ではオフセット校正印刷の会社で胆管がんを発症し、7名の死亡者が出たとの報道は、全国的に注目された。その後、会社名が判明し、SANYO CYP㈱と知られるようなった。 調査された産業医科大学の熊谷信二先生(労働環境学)とも研究室でお会いし、調査経過や労働衛生学会で2012年5月に報告された内容などを討論する機会があった。 SANYO CYP㈱でのカラ―校正の仕事は地下室に5台のオフセット校正機を設置していて、換気が不十分であったものと推定されている。 使用された洗浄剤は主として、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジクロロプロパン(1,2-DCP)を使用していた。 2005年以降はアルコール、エチレングリコールなどの利用で有機塩素系洗浄剤は利用されていない。従って、1985年から2005年の20年間の利用が胆管がん発症に影響しているものと思われる。 洗浄剤の成分は時代と共に変遷し、また、各国によってもその成分が異なっている。 低沸点の有機溶剤で作業性が良く、ブランケット回復にも効果的な溶剤が使われて来ている。胆管がん発症は1,2-DCPが大きな要因であり、高濃度の曝ろうによることが原因であり、このことは海外文献からも推論されている。 1,2-DCPは皮膚・粘膜に対する刺激性を有し(ヒトの感覚閾値は不明)、また1,2-DCPを含む溶剤又はエアロゾルにばく露される業務に4?6年間、従事した作業者に皮膚炎が認められ、1,2-DCPを用いたパッチテストにより、陽性所見が得られた。 発がん性については、十分な知見がないことを理由に、国際がん研究機関(WHO/IARC)が発がん分類をグループ3(分類できない)としているものの、厚生労働省が実施した長期がん原性試験の結果、ラットを用いた実験から、鼻腔上皮細胞の肥厚形成等が用量依存が認められた。 更に、今回、発生した胆管がんは、高濃度の1,2-DCPに長期間ばく露したことが原因である蓋然性が極めて高いと判断されている。これらのことを総合的に判断すると、胆管がんについても職業ばく露による健康影響に含めて考える必要があると判断されている。基本的にはVOCを工場内に排出しないシステムを構築することが大切である。3.VOC削減 洗浄剤利用に関しては有機則、PRTR(特化則、がん原性指針)に該当しない洗浄剤選定と作業主任者選出、換気装置の設置、特殊健康診断などを行なう必要がある。 印刷工場内では印刷インキ、洗浄剤、湿し水、製本などの接着剤などからVOCが排出され、工場外部へは地球温暖化効果を減少させるためオフセット印刷工場では400ppmCの排出まで許容度がある。 ロッチェスター工科大学(RIT)では印刷工場での環境対応について印刷工程別に要因分析していて、Proo(f 校正)やPrinting Pres(s 印刷)でVOCが発生している。特に洗浄液でのVOC発生が高くなっている。 VOCを削減するには全体換気と部分排気が必要であろう。 印刷工場では従業員の健康管理や環境ホルモンなどを考慮して、発生するVOCを排出するか又