ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第14巻

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国際印刷大学校研究報告 第14巻

6■国際印刷大学校研究報告第14巻(2014)三 浦 澄 雄ネット時代のプライバシィをどう考えるかHow Should We Think about Privacy ? ―Jaron LanierSumio MIURA 個人情報保護法が成立して以来、社会は個人情報に注意するようになり、個人情報を多く扱う印刷企業も関心を高めてきた。個人情報保護に熱心な印刷企業はプライバシィマークを取得し、会社内に個人情報保護の管理システムを作り情報の流出を防いでいる。 インターネット時代に入り個人情報の所在が印刷物とかテレビだけでなく、ネットあるいはスマートフォンのサーバーとか防犯カメラの中に分散している。最近、米国のNSA(米国家安全保障局)の前職員の告白によれば西欧の首脳の電話が盗聴されていたということである。このようなスパイ行動は特別として。ネット上の物品購入とかeメールの交信などは運営会社のサーバーに収まっていて、もしそれを利用しようとすれば利用可能である。最近話題になっているビッグデータの活用はその一種で、消費者の消費傾向を大量のデータから推測し、次のヒット商品は何かを予測するものである。スマートフォンからの情報で各人の所在位置のビッグデータを知り、それを交通緩和に役立てようとする試みもある。 あるいは犯罪容疑者の追跡に街頭に在る防犯カメラの映像を調べるのはおなじみになっている。技術が進むにつれ個人情報はいろいろな所にばら撒かれるようになった。このように分散したプライバシィをどう考えるかという記事が昨年のScientific American11月号に載っていたのでその訳文を紹介する。ただし字数の関係で抄訳である。筆者はコンピュータ科学者のJaron Lanierでマイクロソフト研究所の所属である。要旨 プライバシィはまだ死んでいない。ネットワーク時代のプライバシィは今日のわれわれの選択によって10年以内にその結果が表れる。 プライバシィを諦めてその代わりに得られる利点(例えば安全)との取引の関係で議論することは避けなければならない。このような利点は誇張されがちである。 各人のプライバシィは一つの倫理を課するのではなくプライバシィのいろいろなレベルを各人が選べるようにすべきである。 金になる個人情報は人々を情報の虜にし、プライバシィのレベルを勝手に選ぶようになる。一方、データが有料になると企業や行政がやたらに情報を蓄え、私物化する。1.不確定な情報 複雑な問題や問題点のはっきりしない事柄を整理するためには焦点を絞ることが効果的である。個人情報の問題も焦点のはっきりしないものである。プライバシィを軽く考えている国や民間企業はプライバシィを話題として取り上げるのを歓迎しない。たとえばNSAの前職員が告白した後でもNSAの概略を知ったにすぎない。 ある人について集めた個人情報を保持しているのは一機関だけでない。NSAのような組織は何処よりも多く保持している。しかし民間や行政が個人データをどれくらい利用したのか、その影響がどんなものであるか判っていない。 そんな訳で、プライバシィは科学以外の方法でしか追求できないあいまいな課題である。理論に頼るのではなく、哲学とか内省、逸話を信じるべきだろう。かといって考察出来ない事ではない。