ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第16巻
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国際印刷大学校研究報告 第16巻
デジタル時代の印刷トラブル対策■デジタル時代の印刷トラブル対策Print troubleshooting in the digital age*小金陽介Yosuke KOGANE1.はじめに2015年11月、筆者の勤務する富士精版印刷株式会社は、『品質管理365日』第6集(1)を発行した。本書は2009年7月1日から2015年6月30日までの6年間に発生した印刷トラブルの事例集である。弊社の品質管理運動の方針は、「事故はかくすな。正直に報告し、原因を追究せよ」(代表取締役会長・石川忠)の言葉に象徴される。品質管理室は、印刷事故が発生すると、発生部署・事故内容・損失金額・対策を記載した事故報告書を作成し、不良見本を添付して、全社員に情報開示し、原因究明・再発防止に取り組んでいる。この事故報告書は年1回、社内報「富士」(2)で事故金額も含めて外部にも公開されている。『品質管理365日』は、この事故報告書を、一冊のレポートにまとめたものである。筆者は、その企画と編集にあたった。本論ではその概要をまとめた。2.なくならないヒューマンエラー『品質管理365日』の原点は、初代品質管理室長・海老良周(えびよしちか)が著した『印刷業のトラブル対策120』である。本書が刊行された1984年は、アップルコンピュータ社がマッキントッシュを発表した年でもある。マッキントッシュの登場によるDTP(Desktop Prepress)の大きなイノベーションの波は、世界中を席巻し、印刷業界に劇的な構造変化をもたらした。DTPワークフローの登場により、デザインやプリプレスの技術的なハードルが大幅に下がり、プロとアマの境界もなくなった。そのことがヒューマンエラーの増加に拍車をかけている。初期段階のミスや不具合が発見されず、最終工程まで引き継がれ、納品後に発見される印刷事故が目立つ。「データが作れる」ということと、「印刷用データとして適している」ということは全く別問題である。たとえば、Illustratorのデータ上は、1%以下の網点も0.01mm以下のケイも作成可能である。しかし175線のオフセット印刷では、そんな超微細な網点や極細ケイは再現保証性がない(本書P37・以下ページ数は本書からの引用を示す)。3.データ制作時のミスをどう防ぐか出力トラブルについては、デジタル手法ではデータのプリフライト・版面検査機の活用、アナログ手法ではあおり検版(残像法)などの防止策がある。しかし「訂正指示のない文字列を消去した」(P34)など、データ制作時のミスは、今のところ決定的な解決策は見つかっていない。ヒューマンエラーをゼロにすることはできないとしても、エラーの影響を実害のないレベルまでコントロールすることは可能なはずである。この事故も、いくつかのエラー(ルール違反)が重なり、連鎖した結果であった。(1)オペレーターのケアレスミス:複雑な文字列移動をカット&ペーストで行っている途中で、文字列を消去してしまった。13