ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第16巻

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国際印刷大学校研究報告 第16巻

■国際印刷大学校研究報告第16巻(2016)オペレーターのケアレスミス防止には、抜本的な解決とはいえないが、文字列の移動をコピー&ペーストで行うことを推奨している。ダブり(情報の重複)のリスクはあっても、第三者にもミスを発見・修正しやすくなるからである。制作物は住所録であり、万が一見逃しがあっても、情報そのものが消えるよりは、エンドユーザーにかける迷惑も少ない。(2)営業のディレクションミス:営業が不完全な状態の原稿で作業をスタートさせたため、初校提出後に大幅かつ頻繁な訂正が発生した。営業のディレクションミスについては、InDesignはテンプレートに文字を流し込み、体裁を整える組版ソフトであるという認識を徹底することである。活版時代、文選、植字及びと組版は別工程だったが、この原則はDTPでも変わらない。文字入力と組版はあくまでも別工程である。前段階で、Excelなど表計算ソフトを活用して、文字原稿整理を徹底することが望まれる。(3)上司のマネジメント不足:オペレーターがクライアントと直接やりとりしており、校正履歴も残していなかった。参照すべき原稿が残っていなかったため、営業・上司・校正室とのダブルチェックが機能しなかった。上司のマネジメント不足については、作業内容が第三者にわかるように、校正の履歴は必ず記録に残すよう管理指導しなければならない。電話やメールなどの指示も、原稿に転記し、校正室のチェックを受けることが必要である。どれも制作にあたっての基本的なルールである。現場の作業には例外もいくらでもあるが、3つのうち、どれか一つでも守られていたら、このミスは未然に防止できていたと考える。4.電子版について本書のデジタルブックも作成・公開(1)している。デジタルブックのメリットは、アクセスログの解析を通じて、ページ来訪者の閲覧行動をデータ化・可視化できることである。本書に先立つ第5集の電子版は、2015年4月21日に『PJ web news』(『印刷ジャーナル』Web版)、22日に『日本印刷新聞』のWeb版に取り上げられたことで、大きな反響があった。記事掲載直後の3日間で、過去1ヵ月の7倍以上の閲覧数にあたる、28,035PVが集中した。4月21日から30日までの10日間では、36868PV、閲覧者数752ユーザーとなった。第5集で特に注目度の高かった印刷事故事例は、1色調不良(刷り出し分の混入)、2印刷原稿の表裏の貼り間違い、3乾燥不良による圧胴残り、4コスレによる汚れ、5カタログ表紙に旧版データ使用などであった。これらの事故は同業他社でも発生リスクの高い、今後とも注意が必要な事故であることは間違いない。しかしユーザーの閲覧行動を追跡すると、途中で閲覧をやめる離脱率も高かった。年度別の報告形式のため、ユーザーが自分の関心のある事例を見つけにくいという、導線設計に問題があったためと思われる。第6集では、年度別の報告形式から、工程別の報告形式に編集方針を見直した。本書に収録した事故71件のうち40件には、関連する事故へのリンクを設定するなど、インタラクティブ性を高めた。タイトル部分が蛍光色で表示される事例には、関連事故へのリンクが設定されている。印刷トラブルは、用紙の特性、印刷方式、インキの種類・使用量、温度・湿度・通気、加工方法、輸送方法、保管方法など、様々な要因が重なり合い、複合的に発生する。たとえば枚葉印刷で発生したブロッキング(P60)は、非塗工紙へのベタ刷りによる乾燥不良が原因であった。しかし印刷用紙が塗工紙であったとしても、プレスコートなどの後工程で、加熱によるインキの再粘着化が生じ、ブロッキングを招くこともある(P113)。輪転印刷ではブリスター(P129)、製本・折り加工ではコスレ汚れ(P104)などの事故要因になる。このように、「ベタ」という一つのキーワードから、さまざまな事故の可能性が予測できる。本書の電子版は、デジタルメディアのインタラクティブ性を活かして、事故の予測可能性を最大化14