ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第16巻
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国際印刷大学校研究報告 第16巻
■国際印刷大学校研究報告第16巻(2016)業種境界の融解―印刷業は静止画像処理業?―Devaluing domain of printing business sincethe medium was computerized若生彦治Hikoji WAKOHICT機器は情報手段の一つである紙媒体情報を介さず,企業が顧客と直接対話し自ら顧客,生産物・サービス,雇用を創出する社会インフラになっている。印刷業は紙と印刷設備を購入し,紙媒体情報を請負,複写・印刷している量産型請負賃加工業であり,ICT機器と競合する分野でサービス業化などの売上高逓減対応策を模索している。本文は,模索の参考資料としての産業統計表の産業分類区分(所謂『業種』)の境界,統計表改正の歴史および有効活用方法について述べる。1.産業統計表産業統計表は国・地域の産業構造を調査年度別,業種別の企業数,売上高,従業者数,資本金規模の分布状態で示している。業種区分は地域と時代の産業構造の実態を表す基本概念である。この表の利用者は行政や生産者・企業,投資家であり,産業統計表に対して次の事柄を期待している。(1)利用者が注目している国・地域全体の生活や公共福祉,生産物・サービスの需要・供給の包括的把握,政策立案の基礎資料になること。(2)企業からみて自社の製品・サービスの効率的提供,財務の比較評価,存在価値,経営戦略および今後の需要動向の判断材料になること。(3)業種区分が何らかの科学的・客観的根拠,経済論理・思想に基づいて定義され,経済推測,国際比較,ルールとの適合性,継続性,高い信頼性・有用性を有していること。しかし,利用者の期待と統計表作成者が実際に提供できる資料との間には大きな段差がある。技術進化,消費人口数,労働者数,貿易,戦争は生産物・サービスの種類,提供方法,生産規模,価格を流動させている。また,この表は調査機関の調査目的,予算,集計期間が個々に制約されて作成,かつ回答者の善意の基で成り立っている。表作成者は費用対効果を上げるため調査対象と設問の内容をわかり易く簡潔に表現すること,回答者の労力負担を減らすことを配慮し,業種区分を人為的,便宜的に設定している。調査結果は事前に予測できない。この流動,制約および予測困難は結果的に業種区分の境界を流動させている。2.産業分類表の歴史印刷業は,文章・静止画像の複写請負賃加工業として書写の手作業から分化している。中国の印刷業は6世紀から木版で書籍を量産し,低価格化に寄与した。木版印刷は書写作業よりも労働生産性が高かった。グーテンベルグは聖書が木版で作成されていた1439年に低融点の金属活字を発明,刷版の寿命を延ばし,労働生産性を向上させた。印刷業の経営者は同業者が乱立し,出版依頼者の争奪戦と低価格化に奔走した。製紙技術の機械化は紙の価格を下げ,印刷物の大量消費,大衆への知識流布および印刷業を繁栄させた。文章・静止画像は1960年代の欧米諸国において電子・電磁波媒体(コンピュータ)で作成,編集,印刷,保存可能となり,1980年代以降からデジタル信号通信網(インターネット)で遠隔地へ送受信できるようになった(参考資料1)。コンピュー2