ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第16巻

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国際印刷大学校研究報告 第16巻

次世代有機ELディスプレイとPE(印刷技術)■次世代有機ELディスプレイとPE(印刷技術)Next-Generation OLED Displays and Printed Electronics手塚博昭Hiroaki TEZUKA1.はじめに有機ELディスプレイという言葉も、携帯電話への搭載や有機ELテレビの登場により身近なものとなった。有機ELディスプレイは、薄さ・軽さ・高コントラスト・応答速度の速さから、次世代のディスプレイ技術と期待されてきた。しかし、現在、主流の液晶ディスプレイに比べて、製造プロセスの難度が高い、高コストと言う問題が有った。米アップルは、スマートフォン「iPhone」に3年後の2018年有機ELディスプレイを搭載する製品を販売する計画を発表した。「iPhone」は世界出荷が年間2億台を超え、液晶ディスプレイを搭載した製品と並行して販売する予定である。これは有機ELディスプレイにとって、飛躍の大きな第一歩である1)。有機ELディスプレイの基礎技術は日本勢が先行した。2007年にソニーが世界初のテレビを発売。パナソニックなども有機ELパネルの開発を進め、世界を牽引して来た。しかし、生産効率の悪さ等で液晶ディスプレイに代わる所までいかなかった。一方、2010年にサムスン電子が発売したスマホ「ギャラクシー」に内製の有機ELパネルを搭載して量産技術を蓄積し、日本勢を引き離した。LGディスプレイもテレビ向けを量産し、韓国2社が有機ELパネル市場を占めた。日本勢にとって、有機ELパネルのiPhoneへの採用は、再度の市場への挑戦となる。液晶ディスプレイに無い、省電力で鮮やかな色の再現性を持っ有機ELディスプレイがiphoneに採用されることで、技術革新が進む可能性が高い。その鍵の一は、プリンテッドエレクトロニクス(印刷技術)である2, 3)。2.有機ELとは1987年にC.W.Tang等により有機ELの基本構造が発表されて約30年が過ぎ、ようやく市場が形成されようとしている4)。5)2.1有機ELの原理有機EL素子はキャリヤー注入型のデバイスで、電極間を挟んだ構造であり、直流電圧を加えることで正孔と電子が発光層で再結合し発光する。そのため、自発光型のディスプレイデバイスに分類される。その基本的な素子構造は図1(a)に示すように、ガラス基板に、透明導電極(ITOなど)を形成した上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極が積層されている。注入された電荷を発光層内に閉じ込めて再結合させることが発光効率の向上につながり、発光層の正孔輸送層側に電子ブロック層を設けることもある。発光色は、発光層を構成する色素により決定(a)基本的な素子構造(b)各層のエネルギー図電子エネルギーDC数V光陽極注入光発光正孔輸送層発光層正孔は各材料層の電子の詰まった軌道を移動図1有機ELの原理電子は各材料層の空の軌道を移動再結合金属(陰極)電子輸送層発光層正孔輸送層ITO(陽極)ガラスまたはフィルム基板電子輸送層注入陰極5