薬用草木 ──果実がきれいな薬用草木

7月 バントウ(モモ)

バントウ(モモ)

果実の中の堅い核のさらに中身(実はこれが種子)を桃仁[トウニン]という生薬(しょうやく)にする。桃仁は漢方で駆瘀血[クオケツ]と呼ばれる働きがあり、血[ケツ]の巡りが滞っているのを解消する働きがあると言われている。食用、観賞用など非常に多くの品種があるが、アンズ、ウメ、スモモなどとこの核の様子が大きく異なっており、モモの核はより扁平で深い溝があるのが特徴である。
またモモの果実には古来から霊力が宿ると考えられ、儀式や悪魔祓いなどに盛んに利用されてきた歴史がある。
Prunus persica Batsch var. platycarpa L.H.Bailey

8月 ハス

ハス

花は観賞用に、肥大した地下茎はレンコンとして食用にするが、生薬にするのはいわゆるタネで、真ん中の胚が取り除かれて穴があいたようになっている場合もある。
生薬名を蓮肉[レンニク]といい、滋養強壮や鎮静の活性があるとされる。開花後に肥大する漏斗型の部分は植物学的には花床(かしょう)といい、タネはこれに埋没したような形で熟すが、その様子が蜂の巣のように見えることから、古くはハチスとよばれていたものがハスになったと考えられている。
Nelumbo nucifera Greater

9月 サンショウ

サンショウ

ミカンの仲間である。熟した果実の果皮を生薬にするが、これをよく観察すると、ミカンの皮と同様に油を含む油室がたくさんあるのがくぼみとなって見える。
味は麻痺性で辛く、芳香性健胃薬として伝統薬等に配合される他、香辛料としても利用される。 近年、腸の外科手術後に腸の運動再開を促進する目的で処方されることが多くなった漢方処方の大建中湯[ダイケンチュウトウ]にも、また新年を祝う屠蘇散[トソサン]にも配合される生薬である。
Zanthoxylum piperitum De Candolle

■解説   伊藤 美千穂先生(京都大学大学院薬学研究科 准教授)
■撮影協力 武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園
■写真   近江 哲平[富士精版印刷株式会社 撮影スタジオ]
■デザイン 河野 公広[富士精版印刷株式会社 東京支店]
■カラーマネージメント 滝口 章人[富士精版印刷株式会社 プリプレス部]