ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第15巻

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国際印刷大学校研究報告 第15巻

ネットワーク社会と中小印刷業■ネットワーク社会と中小印刷業若生彦治Printing industry as a whole is in declineHikoji WAKOH1.はじめに日本の印刷・同関連企業(「印刷業」と記す)の企業数(約3万社,1998年)および売上高(6.90兆円)は1998年を頂点に年率3%前後の割合で逓減中である(文献1)。本稿は,企業統計データを基に日本の印刷業の逓減実態および印刷業が付加価値向上策で抱えている経営課題を考察する。2.逓減の実態印刷業の年間売上高の逓減は資本金額が零細小規模および巨大規模群に集中発生している。総出荷額に占める資本金階層別出荷額の占有率は,2005年と2010年の5年間で比較すると資本金額3千万円未満,100億円以上および従業者数5千人以上規模で減少,資本金3千万円?3億円未満で横ばい,3億円以上?100億円未満で増大している(表1)。売上高は大手2強がともに1.5兆円(2010年),準大手・中堅十数社が200?2000億円および大手・準大手・中堅を除いた零細中小規模が10億円以下である。資本金額3千万円未満の企業は従業者1人当たり1千万円の出荷額を獲得するために中堅・大手企業の約3倍の従業員数を投入し,自社が不足している設備・技術を同業他社へ委託する互助下請関係で補完している。2008年の事業所数1.39万(従業者数4人以上規模),従業者数29.9万人および総売上高(製品出荷額等=出荷額)は頂点に達した1990年前後を100%とすると50.5%,67.8%および69.0%へ下落している。印刷業を含む全製造業に占める印刷業単独の事業所数および出荷額の比率は6.21%および2.06%である。印刷業は製造事業所総数に占める比率が他業種と比べて高い割に売上高比率が3分の1と小さな業種である。1事業所当たり平均売上高はピーク時から印刷業が31.0%および製造業が15.2%減少している。印刷業の2010年の1事業所当たり平均従業者数および1人当たり平均出荷額は21.5人(製造業の平均値の62.9%)および1,942万円(52.9%)と製造業の約半分である。事業所総数18,493社および従業者総数369,385人は2002年から8年間に29.6%減少および18.3%減少しており,製造業の平均値の2倍の速さで逓減している(表2)。印刷業は企業総数の85%が従業者数19人以下,1社当たり従業者数4?9人(11規模区分の中で最小区分)が全事業所数の42.2%を占めている。これらの統計値は,印刷業は売上高の少ない零細規模企業が多数ひしめき合い,従表1印刷・同関連業の資本金階層別製造品出荷額等比率の5年間の増減調査2005年調査2010年資本金規模従業者/出荷額人/千万円固定資産/出荷額千万円/千万円出荷額比率%従業者/出荷額人/千万円固定資産/出荷額千万円/千万円300万円未満300万~1千万円未満1千万~3千万円未満3千万~5千万円未満5千万~1億円未満1億~3億円未満3億円~10億円未満10億~100億円未満100億円以上1.121.100.680.500.470.340.320.280.130.020.010.180.330.360.360.310.400.300.16.130.611.212.010.18.05.716.2調査対象会社は従業者数4人以上。有形固定資産額年初現在高(固定資産)は従業者数30人以上。出典:経済産業省(2012)『工業統計表/企業統計編』データをもとに著者作成。1.211.140.710.500.480.340.300.260.19―0.020.010.320.370.310.280.44―出荷額比率%0.14.726.911.513.311.411.47.912.8出荷額増減↓↓↑↑↓13