ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第18巻|富士精版印刷株式会社 FUJI SEIHAN PRINTING Co.,Ltd.

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国際印刷大学校研究報告 第18巻

17有機ELディスプレイの技術史概論(Ⅰ)黎明期■手塚博昭有機ELディスプレイの技術史概論(Ⅰ)黎明期The Introduction to Technical History of Organic EL Disply(Ⅰ)The Ealy StageHiroaki TEZUKA1. はじめに本年、2017年は有機ELディスプレイにとって画期的な年になった。AppleのスマートフォンiPhon Xに、従来の液晶ディスプレイ(LCD)に取って替わり有機ELディスプレイが搭載・採用された。更に、大型・4K高精細度有機ELディスプレイ・TVが続々と登場した。有機EL(Organic Electroluminescence)とは、「ガラスやプラスチックなどの上に有機物を塗布し、そこに電気(Electro)を通すと有機物が綺麗に発光する(luminescence)というものだ。」絶縁体と思われていた有機物だが、ある種の有機物をうまく使うと電気が流れ(導電性)、それが光る。この現象を利用して、表示に使ったのが有機ELディスプレイである。今日の、スマートフォンに代表される高度のユービキタス情報革命のディスプレイとして、液晶ディスプレイの果たした役割は大きい。薄型、軽量、低電圧、低消費電力等、ブラン菅(CRT)ではなしえなかった「フラット・ディスプレイ」を実現し、生活のあらゆる分野において、コンピューターで処理された情報を人々に直接伝え、人々を結びつける役割を担っている。しかし、液晶ディスプレイは基本的に自発光型では無く、バックライトの助けを必要とする。その為、ディスプレイとしての輝度、応答速度、画質、射野角等や薄型化、大型化、低コスト化に弱点がある。有機ELディスプレイは自発光型であり、液晶ディスプレイを凌駕する次世代ディスプレイとして、期待されている。著者が、約50年、半世紀前、ブラン菅(CRT)に替わる次世代ディスプレイの研究開発を始めた時、候補として液晶ディスプレイと有機ELディスプレイがあった。液晶ディスプレイのブレークスルーは、1971年、Roche研究所のMartin Schadtらが、Applied Physics Letter(Vol.18,No.4,15February 1971)にTN液晶ディスプレイを発表し、一気に実用化研究が進み先行した。一方、有機ELディスプレイのブレークスルーは、Kodak社の研究員のC.W.Tangらが1987年発表した論文、Organic electroluminescent diode(Appl.Phys.Lett.51,913 1987)である。本稿では有機ELディスプレイのブレークスルーをもたらしたまでの、即ち、本来絶縁体である有機物に電気が流れ(導電性)、そして電気が光る現象(EL)を求めた、有機ELディスプレイ黎明期の先駆者の研究の足跡、歴史を主として論文等の文献から調べ、述べる。2. 有機ELディスプレイの黎明期歴史2.1 導電性(伝導性)有機物の発見有機ELをはじめ、ゼログラフィーのための有機伝導体、有機個体太陽電池、色素増感太陽電池、有機レーザー等は、いずれも個体の有機物が電気を通すという性質を利用している。有機物は長い間絶縁体であると思われていた。何をもって導電性有機物の始まりとするか、というのはなかなか難しいものですが、有機物における導電性の研究はまず、純物質を対象として行われた。例えば、フタロシアニン系物質での伝導性の研究や、アントラセンの光伝導等が当たる。しかしながら、この段階では、導電性があると言っても通常の金属と比べて10の10乗程度も高く、まだまだ導電性の物質と呼べない状況でした。もう一つの問題は、これらのn電子系有機化合物のサンプルでの導電性は不純物の影響を受けやすく(この場合、不純物が混じると非常に抵抗が大きく