ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第18巻|富士精版印刷株式会社 FUJI SEIHAN PRINTING Co.,Ltd.

ページ
24/44

このページは 国際印刷大学校研究報告 第18巻 の電子ブックに掲載されている24ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

国際印刷大学校研究報告 第18巻

22■国際印刷大学校研究報告第18巻(2018)波多野孝司IoT による印刷機稼働状況の見える化についてVisualization of printing machine operation status by IoTKoshi HATANO1. はじめに印刷会社にとって、オフセット印刷機の生産性向上は重要なテーマである。制作、プリプレスから加工に至る印刷製造プロセスにおいて、印刷工程は中心的な役割を担っているのみならず、オフセット印刷機は印刷工場内の生産機の中でも設備投資額が大きいからである。印刷工場の管理者は、印刷機の生産性を阻害する問題点を解決し、生産量を最大化するとともに、製造コストを圧縮しなければならない。印刷機の生産性を阻害する問題点へのアプローチ方法としては、まず「何が問題なのか」を知る必要がある。そして、その問題点を知るためには、数値で印刷機の稼働状況を把握すること、つまり稼働状況の「見える化」が必須となる。本稿では、オフセット印刷機稼働状況の「見える化」について現状の課題とその解決のための方策について述べていきたい。2. 印刷稼働状況の見える化に関する課題オフセット印刷機の「見える化」に苦労している印刷会社は多い。印刷機稼働状況の見える化を、印刷オペレータによる日報ベースで行っていることが一つの理由である。印刷オペレータが、印刷作業終了後(一日の作業終了後という場合もある)に、手書き、もしくはシステムへの登録によって作業報告を行っている。この方法は、担当者の主観と記憶に依存しているため、正確かつ詳細な記録が難しく、その分析も手間がかかるうえに正確性とリアルタイム性に欠ける場合がある。昨日の印刷機の本生産時間や生産量、停止時間、といった基礎的なデータにすら、ひと手間もふた手間もかけないと辿り着けないという話も聞く。結果として、印刷オペレータの日報ベースによる見える化では、印刷現場の真の問題点を浮き彫りにするのが困難という現状がある。そのため、現在の多くのオフセット印刷機には、各種のセンサー情報や操作記録を集約し、印刷機のオペレーションスタンドなどで確認できる稼働計ソフトウェアが備わっている。印刷ジョブ内容、印刷時間、印刷スピード、印刷枚数や機械のエラー情報などが自動で記録され、各種の能率まで算出されるので、客観的かつ正確な分析が可能である。ところが、こうした印刷機の稼働記録の仕組みは、10年以上前から普及しているものの、そのデータが印刷機の生産性向上という本来の目的のために有効活用されてきていたかと言えば、そうでもない。その理由として考えられる課題を以下にあげてみる。1 工場管理者が各印刷機のオペレーションスタンド上で記録を確認する必要がある。また印刷機の稼働中は確認できない2 収集データの分析機能が足りず、必要な情報に再加工する必要がある3 収集データを見ても、具体的な問題点がわからない4 問題点がわかっても、具体的な解決策がわからないまとめると、現行の印刷機稼働記録ソフトウェアの課題は、A) 必要な場所(部門)に、必要な情報が、必要なタイミングで伝達できていないことB) 生産性阻害の問題点と解決策まで提示できていないことの二点に集約されると言えるのではないだろうか。