ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第18巻|富士精版印刷株式会社 FUJI SEIHAN PRINTING Co.,Ltd.

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概要

国際印刷大学校研究報告 第18巻

5印刷情報と電子情報■三浦澄雄印刷情報と電子情報Print Information&Electronic InformationSumio MIURA印刷は情報産業であると言われるようになった。それは電子系の情報が世界中を巡るようになってからのことであろう。情報産業と言われる前から印刷は情報を伝え、記録する役割を果たしてきた。電子情報が大量の情報を素早く世界中に伝えるようにと情報産業としての印刷の役割は活動範囲が狭まりつつある。これまでの印刷とこれからの印刷の役割について考えてみたい。1 印刷情報1-1 印刷初期までの情報アルタミラの洞窟に描かれた動物の絵は現在残っている情報の最古ものであろう。同時代、動物の骨や象牙に描かれた絵が残っているがこれも古い情報である。時代が下って3000BCにメソポタミアで発明された楔形文字は文字を使わない書法の最初と言われている。この種の書法はエジプトやインダスでも発見されている。当時のエリートや僧侶などごく少数の者が約束事などを記し、社会体制の維持に役立てたり、記録として残した。文字が発明されると多くの人(子供を含めて)情報を共有するようになる。漢字の発明は1450BC、アルファベットの原型がシリアで1400BCに発明された。情報の種類は宗教上の情報(経典)や技術情報(農業、金属加工)である。しかし印刷術が無かったので口頭で多く伝えられた。印刷術の発明は1447年のグーテンベルク活字の使用を最初とする考えが一般的である。史実によるとグーテンベルクよりかなり前、450ADで漢字の印刷が行われ、1241年韓国で金属活字の印刷が行われたとある。グーテンベルクを印刷術の発明者とするのは、発明後の技術の普及状況を考えてのことと思われる。中国、韓国で印刷術が発明された後印刷術が普及しなかったが、グーテンベルクの発明以後はヨーロッパ各地に広まり印刷業は儲かる仕事になった。文字が発明され、多くの人が文字を知るようになると文字による情報伝達が盛んになった。特に経典(聖書)を望む人が多かったので、印刷が発明されるまでは写経によって聖書が複写された。一冊の写経に数か月を要したが、グーテンベルクの発明後は一週間で500冊の複製が出来るようになった。(当時の印刷の部数単位は500冊)文字による情報は宗教だけでなく学術書(学問、科学)、娯楽物(トランプ、物語)に及んだ。よく売れた本は天文学、錬金術、科学奥義書などである。学術書の印刷は研究者間で刺激を生み、学問の発展に貢献した。また古典印刷物は思考法に影響を与え、知恵を深めた。物語の印刷は人々に楽しみを与えるとともに郷土愛を育てた。印刷物への要求が高まり、印刷術はヨーロッパ各地に拡がり印刷業は好景気で印刷工は引っ張りだこになった。1-2 現代印刷の情報印刷はその後拡大発展し、印刷情報も多種になる。それらを分類してみるとa. 情報の伝達     新聞、定期刊行物b. 教養、教育、娯楽  書籍印刷、教科書印刷c. 商品の情報、宣伝  商業印刷、ダイレクトマーケティング、カタログ、POPd. 商品の一時的情報  包装、ラベル、包装紙e. 情報の記録、保管  ビジネスフォーム、名簿情報の伝達は印刷の重要な役割であった。日本の洋式印刷の歴史は1848年の本木昌造の活字輸入に始まるが1861年には最初の新聞発行が行われている。それ以来、新聞発行は増加を続け発行部数が4,500万部に達したことがある。ラジオ、テレビが普及したあともしばらく情報を伝える