ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第18巻|富士精版印刷株式会社 FUJI SEIHAN PRINTING Co.,Ltd.

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概要

国際印刷大学校研究報告 第18巻

7印刷情報と電子情報■いニュースをそんなに必要としなかった。新聞の情報で充分であった。それでもラジオは新しい形の娯楽を提供したので日本人の新しいもの好きと相まってラジオの普及は早かった。地方からのラジオニュースは行ったことのない土地の風景を想像したり、大相撲の生中継で双葉山の連勝が止まったことを現場と同時に知ることが出来た。戦後民間の放送局が表れ、宣伝を流すようになると印刷宣伝に影響を与える兆しはあったが、実際には印刷は急成長していた。1952年に公共テレビが1955年に民間テレビが表れると印刷への影響は徐々に出てきた。テレビはラジオ以上の娯楽を社会に与えた。ラジオは聴覚を通しての娯楽であったがテレビはそれに視覚が加わり、それまであった芝居と映画を無料で見られるようになった。民間テレビは視聴率を稼ぐために娯楽性を高めた。当時の評論家はテレビを「国民を総白痴化させるもの」と評したが、国民のテレビ視聴時間が増えていった。テレビの視聴に時間を取られ書物を読まなくなり印刷に影響を与えた。またテレビによる宣伝効果はラジオに比べ大きく、1974年には企業広告費は新聞よりもテレビが上回った。2-3 ウェブ・携帯電話ウェブとはコンピュータをウェブ(蜘蛛の巣)状につないだ回路網のことでインターネットの一種である。ウェブ上にある情報は誰でも利用できるし、情報を提供することも出来る。1993年に世界中を結んだウェブが始まった。ウェブ上各所にある大型のコンピュータが大きな役割を果たしている。コンピュータの記憶能力は莫大というより無限なので、過去印刷物として出版された情報がすべて収まるだけでなくこれからの新しい情報を記憶することが可能である。ウェブはこれらの情報をパソコンを通して入手できる。さらに1970年代に始まった電話が進歩してポケットに収まるコンピュータに代わると、簡単にウェブ上の情報を入手出来るようになった。このことは印刷にとって大打撃である。印刷の役割が情報の伝達だとすると人類の歴史上情報伝達の革命である。3 印刷情報と電子情報どのような印刷物が残るかいろいろ議論されているが、それらの議論の一部を紹介する。新聞印刷は生き残れるかの議論で印刷新聞は一瞥してニュース全体の概要が判る利点を上げている。確かに電子新聞では全体を把握できない不便さはある。しかし新聞の価値は事実を客観的に伝え、解説することにある。読者はそれらの記事を総合して頭脳に入れることがだいじである。電子新聞では事実は頭に入るが体系化された知識としては入り難いところがある。専門書、児童書、教科書からの知識は視覚だけでなく触覚を通して頭に入るという考えがある。確かに記憶は視覚だけでなく聴覚、触覚、嗅覚、味覚を通した方が効果的である。教科書の触感と共に入った知識はいつまでも残るようである。教科書のデジタル化は知識取得に効率的であるかもしれないが頭への収まり方を考えると疑問である。買い物はウェブを通してだけになり、小売店は消滅するという極端な考えが米国にあった。近年小売店の販売が増え、そのための印刷物の需要が増えているということである。買い物は経済、効率を考えるだけでなく、人と接触する楽しさがあることを無視した結果である。商品の広告を印刷物で見るのと画面上で見るのとでは印刷物で見る方が効果的であると思われる。印刷物が普及して六百年にも満たないが、印刷物への馴染みは遺伝子の中に刷り込まれているだろう。印刷物への親しみはそこから生じているので急に印刷物が無くなるとは考えられない。最近、映像の解像性が4Kとか8Kとか喧伝しているが再現性の良さは印刷物の方が優れていると思われる。少なくとも現在の技術では、極上の再現には印刷の出番があるだろう。参考文献Pre-History Colin Renfrew 2013The Gutenberg Revolution John Man 2002Encyclopedia of Graphic Communication 1998Information Age Tilly Blyth 2014Vision 21 PIA 2000知識産業 フリッツマッハルフ 1980日本の100年 1986印刷工学便覧 1987