ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第20巻

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国際印刷大学校研究報告 第20巻

10■国際印刷大学校研究報告第20巻(2020)『印刷メディア産業の技術進化』Management environment change of the print industry in ICT societyHikoji WAKOH1.はじめに印刷メディア産業は紀元前1 ~紀元2 世紀に発明された紙および7 世紀より筆に替わる木版を用いる複写作業請負業として誕生した。情報媒体は情報利用者の目的・期待を素早く効率的に達成させるための道具である。電磁波現象は19 世紀半ばから電気エネルギーを光速30 万km/ 秒(徒歩の2.5 億倍の速さ)で移動させると解明され,電気機械および断続(デジタル)信号の送受信,20 世紀中頃からその場1)で音声・動画・データ2)を機械言語へ変換して演算処理する機械の動力源に供された。この機器3)の携帯化と通信網の連結体(ICT)は紙無しで情報を瞬時に世界へ伝える利便性があり,この低価格化と競争心理が普及を促し,環境変動の判断と対応行動を個人化し,人の役割をより創造的な業務へ変革させている。米国の印刷業は売上高の凋落4)に対し,1990 年代から総合設備稼働率を高めるため基幹業務システム(ERP)を導入した。ERP は米国が70 年代に日本の自動車会社の看板生産方式をモデルに開発した流れ作業の計画・進捗・実績を可視化する隘路検出機器である。本文は,情報媒体が環境変動の認識・対応の補完具との視点からICT 機能の進化(2 章),日本の印刷メディア産業の経営環境変化(3 章)と課題(4 章)を俯瞰する。2 ICT機器機能の進化米国のベンチャー企業(「GAFA」)は情報の利用者が無料・低価格で情報交換したい欲望に着目し,1974~2007 年に利用者の個人情報を収集・分析して収益を得るビジネスモデルを立ち上げた。個人情報は自社の交信・娯楽ソフト又は情報機器に組み込んであるソフト(プラットホーム「場」)と通信網を介し24 時間自動的に記録される。この場の維持費は場の利用者に転嫁される。送受信履歴・交信内容の分析・解析結果は場の閲覧者数,回数,頻度を増やすため,他社の売れ筋商品・技術動向をGAFA の次の新製品開発・技術の先取り,買収企業・研究開発投資先の選定,人材の国際的配置,納税,結果の転売先・広告依頼主との契約の優越・恣意的変更,選別,情報の寡占化に活用されている。クラウドコンピューティング,ビッグデータ(IoT)の解析処理および人工知能(AI)は自然環境や個人の社会行動,物流,軍事の動向監視を機械化し,教育・健康と技術サービス産業を興隆させ,産業の業種区分の定義を融解・分化・統合させている(表1)。3 日本の印刷メディア産業の経営環境変化欧米の産業革命・海軍力,日本への開港は徳川幕府を1867 年(明治元)に崩壊させた。(1) 明治時代の新興企業は本社を江戸の武家屋敷跡,工場を海の埋立て地に建て,加工貿易に必要な製品・原料,工作機械,鉄材,石油,電気,通信インフラを船で欧米より輸出入した。産業インフラとして1870 年(明治3)に電信業,72 年に新橋桜木町間で蒸気機関車,78 年に電灯,90 年に東京横浜間で電話交換業務,1905 年に電車を開通,整備させた。(2) 日清戦争(1894 年)・日露戦争(1904 年)は出版社に爆発的利益を齎した。世界大恐慌,満州事変発生以降の印刷業の主要顧客は食品,繊維業5)から機械・金属業へ替えた(表2)。若生彦治